なごみ通信

なごみ通信 第76号
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なごみ通信 第76号

なごみ通信 第76号

京都 上京区
工芸帯地 洛風林

真実に美しいものは常に新しい

「真実に美しいものは常に新しい」という信条のもと、三代にわたって帯を作り続けてきた京都「洛風林」。その帯は、異国情緒あふれる中にもどこかほっとするような懐かしさを感じさせます。締めやすさや艶やかな質感だけではなく、大胆な配色、意匠化された花や鳥など、様々な要素が絶妙に組み合わさり、洛風林特有の魅力あふれる帯が生み出されています。

魅力の秘密のひとつは、初代・堀江武氏と先代・堀江徹雄氏から受け継がれた資料にあります。染織資料館「織園都」でその一部を見せていただきました。本棚には、年代も分野も様々な本が肩を並べ、しかもひとつひとつがあたたかな存在感を放ち、大切に扱われてきたことが伝わってきました。

階下には、「スペインの法衣」や「ウズベキスタンの刺繍布」…。海外渡航が珍しかった時代から実際に海外に足を運び、譲り受けた様々な美術品や工芸品のコレクションです。世にある文化が凝縮された、小さな世界がそこにはありました。

帯作りの根底にあるのは、多様な文化への畏敬の念

幼い頃からそれらに囲まれて育った、麗子さん、繭子さん、愛子さん。培われた感性を活かし、三姉妹で帯業界を牽引しています。

洛風林さんの帯作りの根底にあるのは、多様な文化への畏敬の念。花嫁に贈るスザニ刺繍をモチーフにするときには、花嫁の幸福を願う家族の思いも図案に落とし込めるようにと、丁寧に作り上げていきます。

「文様には、何百年、何千年経っても変わらず受け継がれるものもあります。しかも言語に関わらず、世界中の人がそれから何かを感じ取れるという、とっても貴重なメッセージだと思います」という現当主・麗子さんの言葉から、世界中の文様と真摯に向かい合う覚悟が窺い知れました。

テーマを念頭に置くと、またひとつコーディネートの幅が広がる

「お客様やお友達と一緒に、心から着物を楽しめるようになりました。立場も年齢も上の方とも、帯を介して共感できたり、美しさ・素敵さを共有できたりするのが本当に楽しいです」と話す麗子さんは作り手でもあり、ひとりの着物ファンでもあります。今年のテーマを決めて、今までの自分とはちょっと違う視点でコーディネートを楽しむという女性らしい一面もあります。今年のテーマは「はんなりストロング」。テーマを念頭に置くと、いつもは見逃していた絵画の色使いや、花の色に気づき、またひとつコーディネートの幅が広がると言います。

アフリカの布をモチーフにした鱗の帯もそのひとつ。いままで落ち着いた色が多かったこの帯も、モダンですっきりとした配色に生まれ変わりました。淡い色で大人の可愛らしさを、きりっとした色で女性の芯の強さを表現したような二色の袋帯。コーディネートの可能性をぐっと広げてくれそうです。

自分の感性に自信を持って表現することで、生きることの楽しさを実感できるのでは

「奇をてらうような新しさではなく、きちんと多くの人に共感してもらえる美しさを」と、初代からの信条を受け継ぎつつも、自分自身の信念を持って帯作りにあたる麗子さん。目新しくも、どこか懐かしい… 洛風林の帯の魅力は、その信念にも基づいているようです。

家庭に仕事にと忙しない現代の女性。自分の感性に自信を持って表現することで、生きることの楽しさを実感できるのではと麗子さんは言います。「もっと解き放たれて、自由に自分を表現できるようになってほしい」と。

洛風林の帯は、初代の時代から、随筆家・白洲正子を筆頭に、聡明で自立した女性に好まれてきました。そして今、等身大の女性として、自己表現の一躍を担ってくれようとしています。 洛風林の帯は、女性の親友とも言える存在なのかもしれません。

京都 上京区
工芸帯地 洛風林